統合化リゾート(IR)産業の舞台裏

世界の潮流として”カジノ”という言葉は”ゲーミング”と読み替えるのがふさわしい.
夜明け前の日本のIRカジノ産業に役立つかも知れないさまざまな事柄について書いてゆきます.
IR事業とSOP(3)
0

    S003_IR事業とSOP(3)

    さて,ケージの内側, キャッシュア窓口の内側は,現金とチップを格納する金庫室であると同時に,行程を担当する人間(複数)が所定の事務作業を行う場所でもある.現金とチップはモノとして在庫管理を行う一方,担当者の動作は管理され抑制されたものでなくてはならない.隅々までCCTVによる監視の眼が届く閉塞空間,金庫室なのである.

     

    CashierCageSkel

    CashierCageOperation

    ↑キャッシュアケージ(スケルトン) ↑稼働中のキャッシュアケージ

     

    そのためSOPにはキャッシュア窓口の内側で担当者,管理者の行動と責務を詳細に記述することが必要となる.職務の分掌は例えば担当者,監督者,管理者,責任者という職名(下位から上位へ)を定め,ある連携動作について職名ごとに執行者と管理者を決める.

     

    ここで読者は,いわゆるSOPなるものは一般の企業では社内規定(内規)と同じだと納得されるに違いない.その通りである.IR事業の一角にあるゲーミングフロア,その中で現金・チップ・カードを扱う場面でも,こと業務手順と管理規定にはごく普通のことが記述されている.

     

    問題はSOPという社内規定が確立しただけでは意味がないということである.規程はその目的を果たすため有効に適用して初めて意味を持つ.それではSOPを運用管理するため何が必要となるのだろうか? また規程を逸脱する事態が生じたときどう対処するのか? ここが勘所(運営ノウハウ)となる.

     

    SOPは原則,事業者ごとに設定するもので原則社外秘として扱う.しかし業界で長く実務に携われば,事業者は異なってもSOPは類似していくるはずである.その中で運営ノウハウ部分については経験を重ねることで属人的に蓄積される.その累積値はいわば企業カルチャーとして残るわけである.他方,ジョブホッピングなど,人の移動と共に社外へ伝播してゆくことも当然ありえることだ.ここを押さえるのは雇用契約を扱う人事部門とするのが普通である.

     

     

     

     

    次回は →「IR事業とSOP(4)」へ


    | kensけん | SOP - IR の実務 | 16:12 | comments(0) | trackbacks(0) | - |
    IR事業とSOP(2)
    0

      S002_IR事業とSOP(2)

       

      SOPモデルという考え方

      ゲーミングフロア(=旧来の用語ではカジノフロア=賭博場;ここでは「フロア」と呼ぶことにする)の実務とSOPたとえばIR事業のうち「フロア」内の典型的な運営の一つを行動モデルと考え,そのSOPはどのように規程するかを考えてみたい.

       

      顧客の行動

      ゲームをプレイしたいと思う顧客はIRホテル(=「フロア」を併設したホテル)内で次のように行動すると考えてみよう:

       

      前提

      • 「フロア」および所属するIRホテルで共通の顧客カードが登録・運用されている.
      • 同カードには顧客のID番号・KYC(身分証情報)・プレイ履歴などが記録される.
      • 顧客はゲームチップ(NNチップ)を購入し,ゲームで獲得したキャッシュチップを現金化する「アジア型」ゲーミング方式でテーブルゲームをプレイする.

      顧客の一般的な「フロア」行動

      • ステップ1:キャッシュアケージ窓口でチップを購入する(注1);
      • ステップ2:好みのゲームテーブルでゲームを開始する(注2);
      • ステップ3:ゲームを終え,手持ちのキャッシュチップをキャッシュア窓口で現金化する(注3)
      注1:キャッシュア窓口: 「フロア」内でゲームチップを販売・買い戻しする窓口.鉄格子で囲むなどで保安を確保するところから「ケージ」(=Cage;檻で囲んだ場所)と呼ばれる.
      注2:チップ: 「フロア」内で限定的に通用するプラスチック製のコイン状の代用通貨;「フロア」の運営はチップの扱い方で次の2種類に大別できる.
      注3:アジア型ゲーミング方式: ゲームに賭けるゲームチップとゲームの勝ち金として顧客へ配当するキャッシュチップの2種類あり,チップの色使い(カラーリング)で区別する. 欧米型ゲーミング方式:ゲームチップとキャッシュチップの区別なく運用する.
      注4:ゲームテーブル: カードを使うゲーム(例:バカラ)を「フロア」が顧客へ提供するためのテーブル(例:バカラテーブル).ゲームの種類ごとに専用のテーブルがある.

       

      SOPにはどう規程するか

      上記の単純な行動モデルを基に,そこで発生する仕事とそのやり方を列記してみる:

       

      ステップ1:顧客がキャッシュア窓口でチップを購入する:

      キャッシュア窓口は顧客へチップを販売するところなので行程は次のように細分化できる:

      • 顧客が現金を提示する
      • 窓口担当者がチップを提示する
      • 顧客がチップを受け取る
      • 窓口担当者が現金を受け取り,収納する

      以上の行程1,2,3,4は次のような手順で構成されている:

      • 顧客が現金を提示してチップの購入を申し出る;
      • 担当者が窓口の所定位置で現金を金種別に数える;
      • 担当者がゲームチップを種別ごとに取り揃え,顧客へ渡す;
      • 受領済みの現金を仕分けて,所定の現金ボックスへ格納する;

       

      さて,以上の手順を社内の標準運営手順=SOPとして記述すると, 例えば次のようになる:

      SOPの記述例(部分):

       

       

      次回は「IR事業とSOP(3)」へ


      | kensけん | SOP - IR の実務 | 16:08 | comments(0) | trackbacks(0) | - |
      IR事業とSOP(1)
      0

        S001_IR事業とSOP(1)

         

        SOP は Standard Operation Procedure の頭文字語

        事業を経営するときの基本要素は人・金・モノと言われる.平たく言えば”人”は組織,”金”は資金,”モノ”は設備や場所を指す.経験的にはこれに”情報”を加えたい.

         

        IR事業をカジノホテル複合事業と読み替えると,その実態は日本国内にはいまだ存在しない.しかしG7先進国では日本を除く各国にIR事業が存在する.各国ではIR事業を一定の法律に規程した要件を満たすことで普通の事業として認めている.

         

        だから日本も法制度を確立してIR産業を認知することが国の成長戦略のひとつとして議論されている.これが2016年12月,国会に上程され成立した「統合化リゾート(IR)推進法」, いわゆる”カジノ法案”である. これにより1年後の2017年末までにはIR産業の基本的な法制度と行政管理の細目が決まることになる.

         

        さてIR分野だけでなく事業経営を考えるとき基本要素は,人・金・モノ+情報だけではない.一般に各要素を経営の実態に落とし込むには事業の目標・目的を設定する.この目標を達成するため事業者は具体的な戦略を立て,目標達成までの道筋 (行程・日程) を決め,投入する資源 (資金・人員) の目標(値)を定める.

         

        次に実施計画に沿い日々の活動を開始するわけだが,もうひとつ重要なことがある.それは企業内の活動を規程する内規 (やるべき事=標準とその手順) を定めることだ.活動の計画から実施,評価まで (いわゆるプラン・ドゥー・シー) を設定し明示するわけである.

         

        IR事業の実態を見るとき他の事業と同様に,社内のすべての活動を規程する内規を定めていることが判る.この定めがなければ,各層の管理者は何に基づいて計画を立案,実行し,結果をどう評価するか判らなくなる.SOPとはつまりこの行動規範を内規として定めたものをいう.

         

        SOPの内容は事業組織ごとに異なってよい.しかしIR事業も収益事業であれば,収益実現までの基準となる事柄は自ずと業界ごとに類似してくるのは当然であろう.国内にIR事業機会が生まれるのはこれからである.IR事業の強力な収益エンジンのひとつがカジノフロアであれば,その運営実務に必要不可欠なSOPをどう構築するかは今後,国内でIR事業に取り組む方々にとり大きな経営課題のひとつとなると考えられる.

         

         

         

        次回は「IR事業とSOP(2)」です.


        | kensけん | SOP - IR の実務 | 12:41 | comments(0) | trackbacks(0) | - |
            123
        45678910
        11121314151617
        18192021222324
        25262728   
        << February 2018 >>
        + SELECTED ENTRIES
        + RECENT COMMENTS
        + CATEGORIES
        + ARCHIVES
        + MOBILE
        qrcode
        + PROFILE